レモン

 近所で見かけた柑橘の木。たわわになった実は、葉っぱのようすからレモンに見える時もあれば、まんまるで黄色よりちょっとオレンジ色で夏みかんに見える時もあった。通るたびに何の柑橘なんだろうと眺めていたが、ついにその正体がわかる日が来た。

 先週の日曜日、掃除機をかけていると、外から呼び声がする。縁側の窓から覗くと、近所の方が「レモンいらんか〜」と一輪車にめいっぱいのレモンを持って来てくれた。やっぱりあの柑橘の木はレモンだったのか。

 そういうわけで、ありがたく大量のレモンをいただきました...が、さあ、ぼやぼやしていられない。保存が効く状態にしなくてはとまずは塩レモンを漬けてみて、昨晩は思い立ってジャムを作ってみた。なかなか市場では手に入れることができない国産どころか地産の、そして安心して皮ごと使える無農薬のレモンが手に入ることは小豆島での生活で上位に入る嬉しいこと。

 レモンのジャム作りは結構手間がかかると気付いた頃には時すでに遅し。なんで今始めちゃったかなと少し後悔しつつ、夜な夜な仕込むことに。黄色い皮をピーラーで剥いてひたすら刻む。そのままだと苦いらしく、2回茹でこぼして苦みを抑える。白い皮も苦いので削ぎ落とし、実から種を取る。ジャムのとろみになるペクチンは種と白い皮に含まれているらしく、お茶パックにしのばせて、果実ときび糖、はちみつを入れた鍋に入れて、一緒に煮る。

 完熟したレモンだからなのか、実はオレンジ色に近く、生で絞っても華やかな香りや、尖った酸味は消え、「これは、レモンなの?」という感じだったけど、ジャムにしたら、一口目はマーマレードの味がしたが、後味はやっぱりちゃんとレモンの味がする。

 田舎で暮らし始めて、市場に出ないような旬を少し過ぎて収穫された作物の味を知ることも増えた。本やインターネットに知恵を分けてもらうことも多いけど、やっぱり自分の舌や目、鼻から直接感じられる学びの方が鮮やか。

 


文と写真 | 香川県 小豆島 ライター 坊野美絵